【お父ちゃんＣｏｍｅＢａｃｋ！！ 第１話】
―第１話―
昼までにぎやかだった公園は夕方になるととても静かだった。
彼はベンチに腰かけるとポケットからタバコを取り出し一服した。空を仰ぐと鳥が夕焼けに向かって飛んでいた。
腹へったなあ・・・、昨日の晩から何も食べていない。そのうえ今日は朝から歩きっぱなしだ。
彼こと桜木真人は父親と二人きりで暮らしていた。その父親が消えて丁度一週間が経った。
「父さん一体どこにいるんだよ・・・」
そう心の中で呟くと、なんだか急に寂しくなった。真人はそのままベンチにもたれて流れていく雲を眺めた。
どれくらいそこに居たのだろうか、空には夕焼けに変わって満月が姿を現した。もう帰ろうと思い真人が立ち上がる
と目の前に一人の男が立っていた。全身黒ずくめで眼鏡をしている。
−いつの間にここにいたんだ・・・？−
「こんばんわ、桜木真人君だね？」男が尋ねてきた。
「はい、そうですけど・・あなたは？」真人が不穏そうに聞き返すと男は愛嬌のある笑顔を浮かべて、
「怪しいものじゃないよ、君のお父さんの事で話がしたいんだが・・・。」
「父さんがどこに居るか知ってるんですか！」
「いや・・・、実は僕は君のお父さんを探しているんだ。お父さんは何か言い残していなかったかい？」
「何も・・・。」真人は肩を落として首を横に振った。
「あの、あなたは父さんの知り合いなんですか。」尋ねられて男は困った顔をした。
「うーん、知り合いではないんだけど・・・」男が言いかけた時、
「こんなところにいたのか。」突然別の男が現れた。この男もまた黒ずくめで、黒く長い髪を後ろで軽く結んでいた。どこか冷たい感じがした。
男は真人に気付くと彼をじっと見つめてからもう眼鏡の男に視線を移して、「こいつか？」と言った。
「ああ、だけど彼は何も知らない様なんだ。」眼鏡の男がそう言うと、長髪の男は真人の方へ向き直り、
「本当に何も知らないのか？」と聞いた。真人がただ黙って頷くと男はため息をついた。
「何も知らないんじゃぁ仕方がないな。神原、帰るぞ。」そう言って、長髪の男はさっと身を翻して公園の出口へ歩きだした。
「おい、伊月・・・待てよ。」眼鏡の男は慌てて後を追った。が、何かを思い出したように振り向いて、真人に名刺を渡した。
真人はそれを受け取り彼らが出て行くのを見守った。
そして自分のアパートへ向かって歩きだした。
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