【お父ちゃんＣｏｍｅＢａｃｋ！！ プロローグ】
−プロローグ−
ドンドン、ドンドンドンドン！！―――――――――誰かがドアをたたいている―――――――――。
「桜木真人！ここにいるのはわかってんだ！！さっさと開けろ！！ドア蹴り破るぞコラァ！！」
誰かが外で叫んでいるー。２人・・・いるみたいだ。
「う〜ん・・・。」
オレはゆっくりと寝返りをうって枕もとの時計に目をやった。
６時にセットしたピカチューの時計が鳴る気配はまるでない。
―――――――ったくなんだってんだよ。こんな朝っパラから。オレは朝苦手なんだよ。
低血圧のうえに貧血なんだからさぁ。栄養失調なのよ、オ・レ！
ドカッ！！ドカッ！！
「ちっ、ドア蹴ってんじゃねぇよ。大事な大事なＭＹ ＲＯＯＭのドアちゃんをよぅ。」
四畳半一間のボロアパートだからって何だってんだ。これでも結構いいところあるんだぜ！
しみつきの壁、もれまくる蛇口、雨漏りする屋根、むける床、ときどき聞こえるユーレイさんの声・・・。
み〜んなオレ＆オヤジのお気に入りなのだ。
ドカッ！！ボカッ！！ ドンドンドンドン！！
「出て来いっつってんだ、コラァ！」
「聞こえねぇのかコラァ！」
ドンドンドンドンドン！！
ったくしょうがねぇなぁ。オレは仕方なく布団から出て玄関へ向かった。
ドンドンドンドンドン！！うるさい２人組はなおもドアを叩き（蹴り）続ける。
「なめくさってんのか、コラァ！」
「はい、はい、はい。」
オレは３回も返事をしてドアを開けた・・・。
ガチャッ ―――――――――――――ゲッ、ドアノブとれかかってんじゃんっ。
「いらっしゃ〜い（関西口調で）･････」
この家に住んでからはや１０年。初めての来客に、にこやかにご挨拶をしたオレだったが、次の瞬間固まった――。
そこに立っていたのは ♪黒い帽子、黒い服、黒い靴♪ で御丁寧にサングラスまでかけたおじ様・・・。
こ、これはいつかテレビで見たヤ・ク・ザさん？キャー！！
オレ初めて本物見ちゃった〜！
「サイン下さい！」
オレは思わず口走っていた。
「てめぇ、なめてんのか、コラァ！ワシらは遊びに来たんじゃねぇんだ、コラァ！」
「てめぇの親父に大金貸したんだがよう、ちぃっとも返してくれねぇんだよ、コラァ！」
「親父の借金は子の借金、つーわけで兄ちゃんに返してもらおうと思ってよぉ
わざわざ尋ねて来てやったんだよ、コラァ！」
「１ヶ月後にまた来るからな。それまでに １万 耳そろえて用意しとけよ兄ちゃん。
わかったかコアラ！！」
あまりのショックに口もきけないオレを残して、一方的に用件を告げたヤっちゃん達は満足そうにスキップで帰っていった―――――――――。
なっなっなんてことしてくれたんだ、お父ちゃ〜んっ！！
１万円！？そんな大金うちにあるわけねぇだろぅ！！
