【お父ちゃんＣｏｍｅＢａｃｋ！！ 第８話】
−第８話−
なんだか、そんな話を聴いているうちに、俺はだんだん正気を取り戻してきたらしい。
どうやら、今まで持ったこともない大金を手にしたせいか、少し俺はいかれていたらしいのだ。
いや、金とは恐ろしいものだ。
ふと冷静になって考えてみれば、どうしてチケットを売っちゃったりしたんだろうとか、なんで吉祥寺はハワイアンなのかとか、いろいろおかしい事は有ったはずなのだ。
何かおかしな事でも口走っていなかったら良いのだが･･････。
「ハマジン君？聴いてる？」
ああ、ほんとに心配だ･･････。
「ハマジン君！！」
「へ！？」
いきなり神原の大声が後ろから飛んできた。
は･･････ハマジン･･････？それは・・・・・
「お・・・・・・俺？」
俺の間の抜けた反応に、神原は怪訝そうに顔で言う。
「そうだよ、君がそう呼べって言ったんだろ？何なんだよ一体･･････？」
・・・・・・・・・・・・・・・えー・・・・・・・・・・っと・・・・・・・・
「すんません、それ、取り消しって事で。」
「はぁ！？」
ますます混乱する神原。
リアクションの激しい奴だ。はたから見ていればいい暇つぶしだが、相手にすると少しウザイ。
なんとなく、親父に似ているような気もしないでも･･････
「とにかく北海道なんだよ！蟹より乳製品を選ぶべきだったんだよ、桜木！」
やはり親父の知り合いだ。訳解らん。
このままハスカップだのロ●ズの生チョコだのと語らせておいても面白そうだが、そうはいかない。それではこいつを（わざわざ五万払ってまで）助けた意味がない。親父の情報を聞き出さないことにはなにも始まらない。
聞いた後はまたもとの位置に片付けておけば良いだろう。
「おい、神プー！」
「神プーはやめようよ･･････。」
やや疲れたような反論。あれだけ一人で踊っていたのだからしょうがない。聞く耳は持たない。
「結局、親父の居場所はわからないのか？」
少しの沈黙のあと、神原は情けなくうなづいた。
せめて手がかりくらいは、と尋ねては見たものの、神原は首を振るだけだった。
こうなったら仕方ない。元のところに戻して･･････と考え始めたそのとき、
「あ。」
神原が小さくひらめいた。
「なんだ？」
「あの人なら今ごろ手がかりくらいは･･････。」
「あの人･･････？」
「あの人だよ、君も見たこと有る。」
「？」
「最近見ないからさあ。」
「あ。」
忘れていた。俺も、神原も、多分作者達も、読者も。
あの男。二人の声が重なった。
『・・・・・・・・伊月。』
