【お父ちゃんＣｏｍｅＢａｃｋ！！ 第２話】
―第２話―
＜この章は、主人公“桜木真人”の主観による＞
神原、伊月と名乗る二人組と遭遇してから１週間が過ぎようとしている。
怪しいものじゃない、とは言われたが、どこをどう見れば怪しくないのか。
まるでカラーマフィアみたいな風貌と、意味ありげな台詞まわし。
そして父を知っている、ということ。
“知り合いではないが探している”と言っていた。つまり、和やかに再会を――などという平和な話ではなさそうだ。
そして、何より怪しいのは――この名刺のようなモノ。
「“ＢＥＲ・オルレアン”か・・・」
何とはなしに紙キレの内容を口にする。
受け取ったときは名刺かとも思ったが、よく見れば何のことはない。
まるで女の書くような丸字で書かれた“ＢＥＲ・オルレアン”の文字、それのみのペラい紙だった。
「“ＢＥＲ・オルレアン”だけじゃなァ・・・」
ごろりと仰向けになり、天井にペラ紙をかざす。
書かれている事と言えば、“ＢＥＲ・オルレアン”のみ。
他には住所も、人の名も地図さえもない・・・どないせぇっちゅーの。・・・と言ってはみたものの、行く用事もなかった。
あれから・・・いや、そのまえからも、相変わらず父に関する情報は皆無に等しかった。
―――“等しかった”と言うには理由がある。
情報、と言えないでもなかった。しかし、それは情報というには、あまりにも意味不明な・・・つまりは、たわごとなのだ。
そんなものなら２つはあった。
１つは、友人――と思っているのは俺だけかも知れないが――吉祥寺からの“情報”だ。
「僕さぁー、昨日まーくん（真人）ちのおじさんに会ったんだけどさー、僕見るなり、おかしなコト言うんだよねー。
“次は北海道じゃけぇ”とか・・・。わけ分っかんないよねー。さっぱだよねぇー。っつーかおじさんてどっかの地方出身？」
その後えんえんと無駄話が１時間ほど続くわけだが・・・。
この吉祥寺という男。どうも男というには抵抗がある奴で、“井戸端のアイドル”と言われていたりする。
それに加えて肩まで伸びた薄茶色の猫っ毛。ひょろりとした体型。色白でどこか憂いのある顔カタチ。・・・何も考えていないともいうが。
これでしゃべり好きとくれば、おばさん方のアイドルにならないハズがない。おばさんのみならず、その外面の良さで町内の『いい青年』の座を欲しいままにしている。
おかげさまで彼からの情報は人のウワサからペットの居場所・安売りの店など多岐にわたり、そのほとんどが信用できる内容となっている。
故に、いくらわけわからんとは言え、父が２週間前 ―――失踪当日――― この町に居て“次は北海道じゃけぇのぉ”と行ったのは真実と言って間違いないだろう。
しかし―――
「しっかし、わっかんないよねぇ。」
人んちのＴＶチャンネルをさも自分のものであるかのように問答無用にばしばし変えながら情報（ネタ）収集に熱心な吉祥寺がつぶやく。
「そもそも“じゃけぇのぉ”ってねェー。っつーか、この不景気に北海道かー。今じゃハワイかグアムのが安いってのにねー。」
「やっぱ北海道だろーかな。」
はぁ、とため息１つ。１５日前の父の言葉を思い出す。
回想、１５日前。
「真人ー。父ちゃんはなァ・・・地球の平和を守るため、はては宇宙の平和を守るために色々考えたわけよ。ウン。ねっ・うんうん。」
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